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ブログ小説:マリンさんちのパパさん その2

そもそも、なぜ酒場で俺が殺されかけているのか?

かつて相棒であったディビッシュの頭から流れている脳漿を見ながら、俺はこの状況を不思議と冷静に考えていた。



神学校から脱走した俺は、土木工事や鉱山で働きながら、傭兵になることを決めた。
農家をやるにせより、普通の商売をやるせよ、まとまった金が無かったし、信用が無いので普通の職業にはつけないだろうとおもったからだ。

土木工事や建築作業員は働く期間にムラがあり、鉱山は肺がやられると聞いて長く務める場所では無いと感じていた。

幸い、と言っていいのかわからないが、俺は人を殺すことに関しては慣れていた。
そのため、「ガキは三日生き残れば良い方だ」
と古参兵に笑われていたが、一ヶ月もいることには、誰も何も言わなくなっていた。

俺が役に立つとわかると、ガキだからこそ、こなせる任務をあてがわれるようになり、それなりに重宝された。

成長すると、俺は傭兵の中でもかなり特別な待遇を受けていた。
子供の時から戦い続けた戦歴もさることながら、文字が読めて計算もできたからに他ならない。

文字が読める奴なんて傭兵にはほとんどいない。
そもそも子供時代に、学校にまともに行ける奴が傭兵なぞやっていない。
ほとんどが子供時代に生き残るのに精一杯で、結果的に傭兵という家業に落ちついた奴らが大半だ。

俺は神学校には一年も通っていなかったが、逃亡した後も文字と計算の勉強だけは怠らなかった。

スラム街で済んでいた時に、文字が読めずに理不尽な契約を結ばれ、痛い目にあった大人たちをたくさん見てきたからだ。

そのため、
文字が読める。計算ができる。
というのは傭兵稼業においては圧倒的なアドバンテージだった。

だから俺のいた部隊は不利な契約を受けずに済んだし、
仲間内からも、ある程度の尊敬と信頼をも勝ち得た。

そうこうしている内に、金もたまり、
何もしなくても向こう十年は暮らせるほどの余裕ができた。

喜んで死にたがる奴はいない。

金が溜まったら田舎に帰って畑を耕すか、商売を始めるか。
傭兵稼業をやっていれば、いつかは行う選択肢だ。

もちろん死ぬまで傭兵を行う奴もいるし、自分の傭兵団を結成する奴もいる。
ツテがあれば騎士にも軍人になる奴もいる。

だが、あいにく俺には帰るべき故郷も無ければ、騎士にも軍人にもなるツテも無かった。

そこで選んだのが商人の道だった。
幸い、傭兵を続けていた俺は、人脈と言えるかは怪しいものの、ある程度の人の繋がりは確保できていた。

傭兵が欲しがる、軍隊が欲しがる商品を集め、現地で売りさばく。
簡単で単純な商売を俺は行おうと考えていた。

無理に高度な商売を行おうとしても成功はしないだろう。
身の丈は守るものだ。
丁稚奉公していたわけじゃないし、商売のイロハを完全に理解しているわけでもない。

そして俺は、ズボラで悪態を良くつくが、しかし、信用はできる同じ隊にいたディビッシュを引き入れたのだ。

傭兵稼業は基本、人間を信じられない世界だ。

だいたい、傭兵なんてやる奴に、ろくな人間はいない。
犯罪者、ゴロツキ、裏切者にペテン師・・・
いわく付の人間がやるものだ。

だからこそ、信頼できる人間というのは何よりも貴重で重宝する。

飲みに行きたいから、女を抱きたいから、金が欲しいとせびることは多々あったものの、それは笑って許せる許容範囲内だった。

少なくとも、勝手に店の金をつかったり、商品に手を付ける人間では無いのはありがたかった。
だいたい商売というのは、この手の「勝手に売り上げを持っていく人間」で破綻するからだ。

スラム街で、その手の事例を腐るほど見ていた俺は、汚いおっさんだったがディビッシュが天使にさえ見えたものだ。


・・・そして二か月前、
この二年間で順調に商売を続けていた俺達の元に、依頼が舞い込んできた。

それはグスタル公国と開戦した、デルス共和国から来たもので、
共和国内で昔世話になったビルス隊長からの応援要請であった。

内容は
「急な開戦で様々な物資が足りないので、都合ができないか?」
というものである。

俺達は狂気乱舞した。
何しろ、この仕事は金貨30万枚という途方もないものであった。
成功すれば、一気に商売を広げられる。
小規模な商店から、一大キャラバンを率いる交易商人になれるのだ。

そこで、俺達は前金で金貨10万枚を貰い、馬車に軍事物資を詰め込んで進んだ。

だが、ここで俺達は浮かれ過ぎたのだろう。
致命的なミスをしてしまった。

交易許可を得るための資金が足りなかったのだ。

グスタル公国とデルス共和国の開戦によって、国境は封鎖されてしい通ることはできない。
だが、俺達のように戦争で儲けたい団体や個人は腐るほどいる。

すると、どうなるか?

国が発行した正式な戦時許可書を貰うか。国境警備隊への賄賂を贈って通らせるか、はたまた、国境付近で抜け道を知っている地元民を雇うか。
基本的に、この三つ以外に方法は無くなる。


そして俺達は間抜けな事に平時の感覚で国境まで来てしまったのだ。

俺のいる、このイルセナス聖教国は、デルス共和国の友好国であるが、正式な国の許可書を待っていたら一ヶ月以上かかる。とても納品に間に合わない。

かといって、賄賂を贈るほど多額の金銭は持ちあわせてはいなかった。

俺達は頭を抱えた。

荷物が無ければ強行突破は可能だろうが、それはナンセンスだ。
商売で行くのに、それでは意味がない。

最後の望みは地元民の協力を求める事だった、話を聞くと値段は高騰しているようだったが無理をすれば何とかなるはずだった。

しかし、これは地元民からは拒絶された。
個人で携帯できる量の物資ならともかく馬車レベルで移動するには無理がある。と言われたしまったのだ。

普段の個人で携帯できる量だったら、問題は無かった。
どうしても、商品の量が足かせとなってしまう。

強行できないかと地元民と相談はしてみたものの、やはり時間がかかりすぎて成功の確率は低いと断言されてしまった。
そうでなくても、戦争状態に入って、押し寄せる難民問題で国境警備兵はピリピリしている。
もし、国境警備兵に見つかったら、問答無用で商品は全て没収され、牢獄行きになるだろう。

やはり、国境警備隊への賄賂を行うしかない。

幸いな事に、国境付近の街に、ディビッシュの弟ビルッシュがいる。
彼は兄と違って温厚で真面目な人物で、税務署の役人を務めていた。

国庫から金を借りるさいには面倒な手続きと審査があるが、便宜をはかってもらえれば一週間で金は得られるだろう。

我ながら良いアイデアだと思った。
少なくても、現在、戦時商人のために利子が爆上げの銀行に借りるよりもはるかにマシだ。

…だが、ディビッシュはそれを嫌がった。
弟に何か頼むのは兄の沽券に関わる…のかどうかは知らないが、少なくとも、強硬にその案に反対したのだ。

その時は、さすがに俺も腹に据えかねた。
期限がせまっているときに個人的な事情で商売をフイにするつもりなのか

「じゃあ、どうするんだ」

と怒りを込めて言い放つと、ディビッシュは汚い笑顔で答えた。
「決まっているじゃねぇか。傭兵方式で金を集めるのよ」

で、酒場で賭け事だ。

傭兵の契約、あるいは戦時商売で儲けている奴らは酒場にごまんといる。
そいつらから金を頂こうって算段だ。

頭に剣を突き付けられたこの状況で、冷静になって考えると、どう考えてもこの行動は悪手だった。

いや、もっと単純にアホだったと言って良い。

なぜ、ディビッシュの案に乗ってしまったのか…
そもそも考えるのは俺の役割だったはずだ。

酒場で行われた賭け事「アルミーディ」で、俺達は勝ち続けた。

この「アルミーディ」とは1~10までの四色の札を使って三枚引き、足した数が一番大きい人間が勝利するという極めてシンプルなゲームだ。

だが、これにはいくつか役がある。
例えば
1の札が三つあれば、問答無用で勝利できる最強の手だ。
3の札が三つあれば[トリニティ]として三倍の数になる。
逆に479の三枚のカードは死の3連続カードして絶対に敗北する。

そして、このゲームの最大の肝は、
掛け金を上げるか、そのまま据え置くか、降りるか、カードを開く前に決めることができる点だ。

つまり、手持ちのカードの数も重要だが、それ以上に相手を怯ませる話術と、胆力が必要になる。

俺達は長年傭兵として戦っていた。
そしてこのゲームは傭兵達が暇さえあればやっているゲームであり、俺達は知り尽くしている。

負ける道理は無かった。
…と、油断していたのが最大の問題だった。

それは十回目の勝負の時だった。
完全に熱くなって血が上っている勝負相手の眼帯の傭兵と、ハゲの商人二人を見ながら、俺はディビッシュに目配りをした。

これは目標の金額に到達するので、切り上げようという意味であった。
ディビッシュはニヤリと笑って腕を上げた。

挑発のつもりだったのだろう、「つまらねぇ勝負だぜ」と体を伸ばした時、後ろにいたウェイトレスの女性に体がぶつかった。

その時、ディビッシュの袖から札が落ちた。

それは負けが込んだ時に行うイカサマのために用意したものだ。
しかし、幾らなんでも、そんな状態で背伸びをするなど、うかつすぎる。

ディビッシュのズボラな性格が招いたミスだ。

眼帯の傭兵の動きは素早かった。
ディビッシュが腕を下ろすより先に、腰から剣を引き抜いて脳天を切り裂いた。

即死だった。

俺は、立ち上がろうした所を上から押さえつけられ、テーブルに顔を叩きつけられた。
ハゲの商人が雇った傭兵達だ。

「イカサマするとはふてぇやろうだ…てめぇ、覚悟はいいか!?」

怒気を含んだ眼帯傭兵と、ハゲ商人の声を聴きながら、俺は妙に冷静になっていた。

(こんなつまらない所で死ぬのか。俺は)

土壇場で腹が座ったのか、それとも諦めたのか。
俺は、脳漿を飛び出して死んだディビッシュの顔を見つめた。

そして目を瞑る。

人間、終わるときはこういうものだ。

「やぁ、何をやっているのかな?」

声が、聞こえる。
甲高い中性的な声だ。

押さえつけられて首は動かないが、目を開いて視線を動かすと。

そこには、全身真っ白な人間が外の光を浴びて酒場のドアの前に立っていた。
まるで、その姿は地上に降りた・・・

「天使、か?」

俺はその姿を見て、思わずつぶやいた。
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